極北カナダ・ユーコン準州より、野生動物の撮影活動や極北での暮らしについて綴っています。

2011年7月28日木曜日

アイヌ民族との交流

現在ユーコンに、遥々日本からアイヌの方たちが訪問されています。

ここユーコンは元々先住民族が暮らしてきた土地。ここでは先住民との関わりは日常的なことです。
今回、先住民に深く関わる方の熱意と努力、そして多くの方々の協力のもと、アイヌの方々をユーコンにお招きし、こちらの先住民の方々と交流するという夢のプロジェクトが実現しました。

先日到着されて早々に、今回の企画者宅にてこの町の日系人会との交流パーティーが開かれたので私も参加してきました。

小雨降る中、全員で庭へ出て感謝の儀式に参列。



火をおこし、木々に向かい、食べ物と酒を捧げて自然の恵みに感謝。共に集えたことに感謝。今日という日に感謝。

わざわざ日本からお持ち頂いた食材とこちらで獲れた鮭で民族料理も作って下さいました。
身に纏われる衣装の文様はどこかしらこちらの先住民のそれにも似た感じで不思議な感じです。


日本にいたころからアイヌ民族には非常に興味があったのですが、係わる機会もないままカナダへ移住してしまいました。まさかカナダの、しかもこんな辺鄙な町でお会いする機会を得られるとは思いもよらず、ただただ感謝するばかりです。

いろいろとお話を伺う中で最も驚いたのは、今なお残る『差別』の問題でした。
私は京都に生まれ育ったので、『部落差別』は身近にもあり知っていましたが、アイヌ民族が未だ差別に苦しんでいるとは知りませんでした。恥ずかしい限りです。
私の中で先住民族とは、『自らの文化を有し、誇り高く、自然と共に生き、生への感謝を忘れぬ崇高な人々』でしたので、自分の生まれ育った国『日本』における『アイヌ民族』は私にとっては誇らしい人々でした。
しかし彼らの受けてきた屈辱的な仕打ちを聞くにつれ、日本という国を恥ずかしく思うようになりました。
ここカナダにおいても、今となっては恥ずかしい歴史が存在しますし、未だ問題は山積みで現在進行形なのですが、それでも先住民による自治や土地所有権、狩猟など生活文化の保護保障など、先住民問題に関しては進んでいる方なのではないかと思います。
この件に関しては日本もカナダから多くを学ぶべきだと思いました。

日本を離れてしまっているので書物の入手など困難な環境ですが、幸いインターネットというもののおかげで海外にいながらもいろいろな情報を入手できるというのは本当にありがたいことです。カナダの先住民について学ぶのと平行して、アイヌの方々のことももっと学び、知識を深め、自分に出来ること(それが何かは今はまだわかりませんが…)をやっていければと思っています。

改めて、この素敵な機会を作ってくれた友人に感謝。わざわざ遠路遥々お越し下さったアイヌの方々に感謝。おばあちゃんも仰っていたのですが、日本の神様とカナダの神様が相談して夢を現実にしてくれたのだと…ただ感謝、感謝、感謝。。。

2011年7月5日火曜日

マウンテンゴート

昨日はホワイトホースから東南東約90kmにある山へ登山に行ってきました。まともな登山は久しぶりで、新しく導入したデジタル機材での野生動物撮影も初めて。心地よい緊張感を抱きつつ、撮影活動再開の悦びを噛み締めながら向かいました。

今回のお目当てはマウンテンゴート。足慣らしと撮影の練習を兼ねているのでホワイトホースからの距離と動物に出会えそうな確立からこの山にしました。

登山自体は片道2kmと大した距離ではないのですが、事前に得ていた情報通り最初から超急勾配…。天気も良かったので汗だくになり息を切らせながら登りました。

森の中ではクマの糞や足跡、狼(たぶん)の糞を数多く見ましたが残念ながら彼らには会えず。
そのかわりにリスがあちこちでお出迎え。リスは町にもいますが森の中で出会うリスの方が活き活きして見えるから不思議です。


急峻な坂なのであっという間に森林限界を越えると一気に視界が開け、美しい湖とそれを取り巻く山並みを一望出来ました。


たった2kmですが所どころ足場も悪く、標高差670mを一気に登るので約2時間かかってようやく頂上付近へ。森林限界を越えてからは時々双眼鏡を取り出し岸壁にマウンテンゴートの姿を探していたのですが見当たらず、「今日はもう会えないかな…」と思い始めた頃、ようやく彼らの姿を発見。最初5~6頭まとまって見えたのですが、私が彼らに気付くと同時に彼らも私に気付き、まだまだかなり距離があるにも関わらず子供とその母親らしき数頭は見えないところへ移動してしまいました。
残った若い2頭は私を意識しながらも移動する気配もないので少しずつ距離をつめて撮影。
 

 
実はこの山のマウンテンゴート達は元々ここに住んでいたわけではなく、今から27~28年前にユーコン政府により別の場所から導入されました。このような、自然界に人が手を加える行為に対しては、問題が複雑且つ科学的過ぎて未だに自分の意見を持てずにいますが、ここに暮らす彼らはこの地に適合し、放たれる命の輝きはやはり【野生】のものでした。

断崖絶壁に生息する彼らの姿は仙人の如く神々しく、魅了されてしまった人も多いのではないでしょうか。私もまた会いに行きたいと思います。

初めて実戦使用した新機材は使い勝手も良く大変気に入りました。まだまだ慣れは必要ですが、私の期待に応えてくれる心強い相棒になりそうです。極限の状況において良い写真を撮るには、時として数値上の性能差なんかより、撮影者の機材に対する満足度・信頼度の方が重要な要素だったりしますので、そういった意味で正しい選択をしたと思います。

さて次はどこへ撮りに行こうか…。

2011年7月1日金曜日

【リコー、HOYAからペンタックスのデジタルカメラ事業を買収】

興味の無い人にはどうでもいいニュースですが…私にとっては一大事です。
つい先日、機材をペンタックスに切り替えたばかりでこの事態。

3年半前にペンタックスがHOYAに買収された時点から不安定な状態が続いていました。
株主から嫌われ、数年前にもビクター(JVCケンウッド)による買収の噂が流れました。その時は実現しませんでしたが。厳しい状況の中で現場の人たちは頑張ったと思います。ここ数年のペンタックス製品は非常に良くなったと思います。吹っ切れたというか開き直ったと言うか…いい方向を向き始めたなと思っていました。
今回のニュースは寝耳に水だったので非常に驚きました。両社の会見によると既に2年位前から話は進んでいたようですが。

リコーといえばその昔一眼レフを作っていたこともあり、その時のレンズマウントはペンタックスと同じで互換性がありました。当時はペンタックス(旭光学)の方が断然高いレベルのカメラを作っていたのになんだか立場逆転ですね。一眼レフ撤退後もリコーは玄人好みの『高級コンパクトカメラ』というジャンルを確立し、現在も高い評価を得ています。HOYAよりもリコーの方が先行き明るいかもしれません。

会見の中でリコーの社長が以下のように発言しています。

「リコーらしい、ペンタックスらしいデジタルカメラの戦い方を求めていく。特にレンズ交換式カメラを強化し、世界と伍して戦える会社にしたい。交換レンズも増やす。カメラに関しては両社とも大変こだわりを持っている。どう活かしていくかは今後考えていく」

「ペンタックスのレンズ、絵作り、メカ設計などを実際に評価し、世界に誇れる技術だと確信している。リコーがそれをしっかりサポートしていく。事業チャン スがあれば、研究開発費もこれまで以上に投資する。大手2社(キヤノンとニコン)と同じものを作ることは全くないし、チャレンジャーとして挑戦できるとこ ろまでやっていくペンタックスは本当にいいカメラを作っているが、なぜか2社に追いつけていない。いつまでも2社じゃないだろうと思っている」

経営的な問題でユーザーは常に振り回されますが、この社長の発言には『志し』を感じますので期待したいと思います。