極北カナダ・ユーコン準州より、野生動物の撮影活動や極北での暮らしについて綴っています。

2011年9月15日木曜日

Fall Colors in the Yukon

今年の夏は天気が悪く、やたらと雨ばかり。。。しかも私が時間のある時に降ることが多く、やりたいことが山ほどあるのに遅々として進まないもどかしい夏でした。
そしてここ北緯60度の地では季節は既に秋。紅葉の見頃も過ぎてしまいました。

ここ最近の様子をまとめてお伝えします。

8月末、家族でドーソンという町まで旅行に行ってきました。
ドーソンはホワイトホースから更に500kmほど北に位置するゴールドラッシュの時代に栄えた町です。
当時のままの歴史的建物やカジノなどがこの町の観光の売りなのですが、我が家の目当てはドーソンの更に北に位置するトゥームストーン州立公園【Tombstone Territorial Park】。ここ数年知名度が上がってきたツンドラの原野広がる美しい大地。私にとっては実に5年ぶりであり、ユーコンに住みたいと真剣に考えるようになったきっかけの地なのです。

Tombstone Territorial Park

5年前はこの界隈に長期で滞在し、8月下旬が紅葉のピークだったので、今回も同時期を狙って行ったのですが、冷夏だったせいかピークは早かったようで既に茶枯れた色が混じり始めていました。
ホワイトホースからの道中は快晴だったものの、トゥームストーンを訪れた日は生憎の曇り空。期待していた野生動物にもほとんど出会えず(リスと雷鳥のみでした)がっかり。
ユーコンに住むようになったとはいえ住んでいる町から500km以上離れているためそうそう来られる場所でもないので残念でしたが、この地に対する思いを再確認することが出来ました。来年また必ず訪れたいと思います。

さて、彼の地より南に位置するホワイトホースでは先週辺りが紅葉のピーク。町中の木々は黄葉し、町を取り巻く山の上のツンドラは赤・オレンジ・黄色と色とりどり。先週時間を見付けて近場の山を登ってきました。家から車で30分ほどで登山口【Trail Head】に着き、登ること約1時間で森林限界【Tree Line】を超え高山ツンドラ地帯【Alpine Tundra】へ。



稜線まで登ると町からは見えない向こう側の景色が眼前に広がりました。

Bonneville Lakes and Boundary mountain ranges
家から1時間半でこの景色…自分が如何に素晴らしい場所に住んでいるのかを再確認。来夏はテント背負ってもっと奥まで分け入りたいと思います。





この時も出会えたのはリスと雷鳥【Ptarmigan】のみでした。

Ptarmigan

先週末は私と同じく野生動物写真家の友人とバイソンの撮影に出掛けました。この日は珍しく雲一つ無い超快晴。生息密度の高い地域なので期待して行きましたが…結果は今回も空振り。友人がブッシュの陰に角を見たのみで撮影に至りませんでした。ハンティング・シーズンなので彼らも警戒しているのでしょうか?動物たちも馬鹿ではないので猟区では明らかに人間を警戒している様子がわかります。

キャンプしながら深夜まで友人と語り合っているとやがて満月が昇り、オーロラが見え始めました。私はオーロラを撮る為にわざわざ出掛けるほうではありませんが、目の前に出ていればやはり撮りたくなるもの。そして今回がデジタルでのオーロラ初撮影でした。高感度に強いことが売りの私の新しいデジイチ。フイルム時代と勝手が違うので最初は試行錯誤でしたがなんとか撮れました。今の時期はまだ雪もなく、高感度に強いデジタルゆえ黄葉も写し込むことが出来ました。

Northern Lights at Aishihik Lake

フイルムの時代には暗く潰れていた部分まで写ること、肉眼で見えていない部分まで写ってしまうことに違和感を感じつつ、それが時代であり、これが新しい可能性を開くのかもしれないのだと、前向きに受け入れていくことにします。既にあるイメージが膨らみつつありますが、多くの条件が揃わないと撮れないカットなので腕を磨きつつ大事に温めていきたいと思います。


北の大地の短い夏はあっという間に通り過ぎてしまいました。短いことは残念ですが、短いが故に短期間に爆発するかのような極北の夏の生命の輝きが大好きです。今夏は天候が悪かった分、今から来夏を心待ちにしつつ、長い冬に向け気持ちを切り替えていきます。雪の世界にひっそりと、しかし力強く生きる動物たちの姿もまた美しいので、極寒の中での動物撮影術を向上すべくいろいろと思案中です。

2011年7月28日木曜日

アイヌ民族との交流

現在ユーコンに、遥々日本からアイヌの方たちが訪問されています。

ここユーコンは元々先住民族が暮らしてきた土地。ここでは先住民との関わりは日常的なことです。
今回、先住民に深く関わる方の熱意と努力、そして多くの方々の協力のもと、アイヌの方々をユーコンにお招きし、こちらの先住民の方々と交流するという夢のプロジェクトが実現しました。

先日到着されて早々に、今回の企画者宅にてこの町の日系人会との交流パーティーが開かれたので私も参加してきました。

小雨降る中、全員で庭へ出て感謝の儀式に参列。



火をおこし、木々に向かい、食べ物と酒を捧げて自然の恵みに感謝。共に集えたことに感謝。今日という日に感謝。

わざわざ日本からお持ち頂いた食材とこちらで獲れた鮭で民族料理も作って下さいました。
身に纏われる衣装の文様はどこかしらこちらの先住民のそれにも似た感じで不思議な感じです。


日本にいたころからアイヌ民族には非常に興味があったのですが、係わる機会もないままカナダへ移住してしまいました。まさかカナダの、しかもこんな辺鄙な町でお会いする機会を得られるとは思いもよらず、ただただ感謝するばかりです。

いろいろとお話を伺う中で最も驚いたのは、今なお残る『差別』の問題でした。
私は京都に生まれ育ったので、『部落差別』は身近にもあり知っていましたが、アイヌ民族が未だ差別に苦しんでいるとは知りませんでした。恥ずかしい限りです。
私の中で先住民族とは、『自らの文化を有し、誇り高く、自然と共に生き、生への感謝を忘れぬ崇高な人々』でしたので、自分の生まれ育った国『日本』における『アイヌ民族』は私にとっては誇らしい人々でした。
しかし彼らの受けてきた屈辱的な仕打ちを聞くにつれ、日本という国を恥ずかしく思うようになりました。
ここカナダにおいても、今となっては恥ずかしい歴史が存在しますし、未だ問題は山積みで現在進行形なのですが、それでも先住民による自治や土地所有権、狩猟など生活文化の保護保障など、先住民問題に関しては進んでいる方なのではないかと思います。
この件に関しては日本もカナダから多くを学ぶべきだと思いました。

日本を離れてしまっているので書物の入手など困難な環境ですが、幸いインターネットというもののおかげで海外にいながらもいろいろな情報を入手できるというのは本当にありがたいことです。カナダの先住民について学ぶのと平行して、アイヌの方々のことももっと学び、知識を深め、自分に出来ること(それが何かは今はまだわかりませんが…)をやっていければと思っています。

改めて、この素敵な機会を作ってくれた友人に感謝。わざわざ遠路遥々お越し下さったアイヌの方々に感謝。おばあちゃんも仰っていたのですが、日本の神様とカナダの神様が相談して夢を現実にしてくれたのだと…ただ感謝、感謝、感謝。。。

2011年7月5日火曜日

マウンテンゴート

昨日はホワイトホースから東南東約90kmにある山へ登山に行ってきました。まともな登山は久しぶりで、新しく導入したデジタル機材での野生動物撮影も初めて。心地よい緊張感を抱きつつ、撮影活動再開の悦びを噛み締めながら向かいました。

今回のお目当てはマウンテンゴート。足慣らしと撮影の練習を兼ねているのでホワイトホースからの距離と動物に出会えそうな確立からこの山にしました。

登山自体は片道2kmと大した距離ではないのですが、事前に得ていた情報通り最初から超急勾配…。天気も良かったので汗だくになり息を切らせながら登りました。

森の中ではクマの糞や足跡、狼(たぶん)の糞を数多く見ましたが残念ながら彼らには会えず。
そのかわりにリスがあちこちでお出迎え。リスは町にもいますが森の中で出会うリスの方が活き活きして見えるから不思議です。


急峻な坂なのであっという間に森林限界を越えると一気に視界が開け、美しい湖とそれを取り巻く山並みを一望出来ました。


たった2kmですが所どころ足場も悪く、標高差670mを一気に登るので約2時間かかってようやく頂上付近へ。森林限界を越えてからは時々双眼鏡を取り出し岸壁にマウンテンゴートの姿を探していたのですが見当たらず、「今日はもう会えないかな…」と思い始めた頃、ようやく彼らの姿を発見。最初5~6頭まとまって見えたのですが、私が彼らに気付くと同時に彼らも私に気付き、まだまだかなり距離があるにも関わらず子供とその母親らしき数頭は見えないところへ移動してしまいました。
残った若い2頭は私を意識しながらも移動する気配もないので少しずつ距離をつめて撮影。
 

 
実はこの山のマウンテンゴート達は元々ここに住んでいたわけではなく、今から27~28年前にユーコン政府により別の場所から導入されました。このような、自然界に人が手を加える行為に対しては、問題が複雑且つ科学的過ぎて未だに自分の意見を持てずにいますが、ここに暮らす彼らはこの地に適合し、放たれる命の輝きはやはり【野生】のものでした。

断崖絶壁に生息する彼らの姿は仙人の如く神々しく、魅了されてしまった人も多いのではないでしょうか。私もまた会いに行きたいと思います。

初めて実戦使用した新機材は使い勝手も良く大変気に入りました。まだまだ慣れは必要ですが、私の期待に応えてくれる心強い相棒になりそうです。極限の状況において良い写真を撮るには、時として数値上の性能差なんかより、撮影者の機材に対する満足度・信頼度の方が重要な要素だったりしますので、そういった意味で正しい選択をしたと思います。

さて次はどこへ撮りに行こうか…。

2011年7月1日金曜日

【リコー、HOYAからペンタックスのデジタルカメラ事業を買収】

興味の無い人にはどうでもいいニュースですが…私にとっては一大事です。
つい先日、機材をペンタックスに切り替えたばかりでこの事態。

3年半前にペンタックスがHOYAに買収された時点から不安定な状態が続いていました。
株主から嫌われ、数年前にもビクター(JVCケンウッド)による買収の噂が流れました。その時は実現しませんでしたが。厳しい状況の中で現場の人たちは頑張ったと思います。ここ数年のペンタックス製品は非常に良くなったと思います。吹っ切れたというか開き直ったと言うか…いい方向を向き始めたなと思っていました。
今回のニュースは寝耳に水だったので非常に驚きました。両社の会見によると既に2年位前から話は進んでいたようですが。

リコーといえばその昔一眼レフを作っていたこともあり、その時のレンズマウントはペンタックスと同じで互換性がありました。当時はペンタックス(旭光学)の方が断然高いレベルのカメラを作っていたのになんだか立場逆転ですね。一眼レフ撤退後もリコーは玄人好みの『高級コンパクトカメラ』というジャンルを確立し、現在も高い評価を得ています。HOYAよりもリコーの方が先行き明るいかもしれません。

会見の中でリコーの社長が以下のように発言しています。

「リコーらしい、ペンタックスらしいデジタルカメラの戦い方を求めていく。特にレンズ交換式カメラを強化し、世界と伍して戦える会社にしたい。交換レンズも増やす。カメラに関しては両社とも大変こだわりを持っている。どう活かしていくかは今後考えていく」

「ペンタックスのレンズ、絵作り、メカ設計などを実際に評価し、世界に誇れる技術だと確信している。リコーがそれをしっかりサポートしていく。事業チャン スがあれば、研究開発費もこれまで以上に投資する。大手2社(キヤノンとニコン)と同じものを作ることは全くないし、チャレンジャーとして挑戦できるとこ ろまでやっていくペンタックスは本当にいいカメラを作っているが、なぜか2社に追いつけていない。いつまでも2社じゃないだろうと思っている」

経営的な問題でユーザーは常に振り回されますが、この社長の発言には『志し』を感じますので期待したいと思います。

2011年6月30日木曜日

Yukon River Quest -Start-

私の住むここユーコンで『クエスト』と言えば世界的にも有名な犬ぞりレース【Yukon Quest】のことを指すのですが、これは当然真冬に行われるもの。しかし6月末の昨日、もう一つの『クエスト』がスタートしました。夏のユーコンの代名詞と言えばカヌー&カヤックでのユーコン川下りなのですが、この『夏のクエスト』はホワイトホースからドーソン・シティまでの740kmを下る【Yukon River Quest】というレース。
普通の川旅であれば2週間くらいかけてのんびり下る距離を、昨年の優勝者は42時間48分で下っています。(ある意味もったいない気もしますが…)

そんなレースに今年は日本人の友人二人が出場しています。彼らの無事と完走を願いつつスタートを見に行ってきました。


川岸にてスタートを待つ艇

出走74チーム。これだけの数の艇が川岸に並ぶ様子は圧巻でした。カヌー&カヤック混走ですが、ソロ(一人)かタンデム(二人)か6人乗りか、男性か女性か混合かで細かくクラス分けされています。


公園の広場からスタート

スタートは陸の上、公園の広場からです。ここから一斉に川岸まで走っていって自分たちの艇に乗り込み出航します。

こちら6人乗りの艇

6人乗りの艇は普段あまり見る機会がありません。友人のボーイフレンドも6人乗りで出走しているようです。

漕ぎ出していった友人…

数日後どんな様子で帰ってくるのか楽しみです。
Good Luck!

2011年6月22日水曜日

先住民の日 -National Aboriginal Day-

カナダでは昨日6月21日は【National Aboriginal Day】(=先住民の日)。
先日ビーバーの解体を見せてくれた方が彫刻師なのですが、彼らの彫ったトーテムポールが新しく建てられるということで、ホワイトホースから南へ約80kmの先住民の村カークロス(Carcross)へ見に行ってきました。

真新しいトーテムポール

伝統衣装を纏いダンス


次の世代を担う少年の眼差しに惹かれました


伝統文化の素晴らしさ、伝えていくことの大切さを改めて感じた日でした。

今の日本はどうなのでしょう…?海外へ出てしまった者が言える立場ではないのかもしれませんが、今の日本人はもっと自国の文化を誇り、後世に大切に伝えてゆくべきだと外から見ていて思います。

2011年6月7日火曜日

ビーバー解体

二週間ほど前になりますが、縁あって先住民の方に罠猟で捕まえたビーバーの解体を見せて頂く機会を得ました。
いつかは見てみたかった野生動物の解体ですが、ようやくその一部始終を間近で観察することが出来ました。

【重要!】
まず最初に、血に弱い人、グロテスクなものは苦手という人は読み進まないで下さい。気分が悪くなられても私は一切責任を持てませんので自己責任でお願いします。




さて、こちらが捕れたてビーバー。2匹捕まえたそうです。

大木をもかじり倒す立派な前歯。黄色いです。

屋内に運ばれ解体を待つビーバー。


まず最初、どこから始めるのか気になるところですが、答えは手足を外すことからでした。




彼らの間では、このビーバーの手足を赤ん坊に結び付けるのだそうです。ビーバーは朝から晩までとてもよく働くので、働き者に育つようにとのおまじないみたいなものだそうです。

外された手足。立派な水掻きがあります。

次は仰向けにされ、下唇から股まで皮だけを切り開きます。


そして特殊な形をしたナイフとヘラでこそげ取るように皮を剥がしていきます。




ここで使われているヘラはムース(ヘラジカ)の骨だそうです。


パートナーも加わり見る見るうちに皮が剥がされていく。


顔の皮も剥がされる。黒い目玉と耳の穴も確認できた。



ついに尻尾以外全ての皮を剥がされた。

そして頭部切断。


頭と尻尾も外された。


前歯の長さに注目。凄く上から生えています。

屋外に移り開腹。



 ついに内臓も取り出された。



皮は売るそうですが、今はあまり良い値では売れないそうです。
肉は当然食用です。次の機会には是非食べてみたいです。

ユーコンに移り住んで一年少々、ようやくユーコンらしい貴重な体験をさせて頂きました。
この解体の工程を見て何を思い何を感じるかは人それぞれです。
私はこの経験から『生きる』ということは『他の命を頂くこと』の上に成り立っているのだという当たり前のことをリアルに感じることが出来たと思います。
解体の現場には二歳四ヶ月の私の娘もいました。見せるべきかどうか一瞬考えましたが、先住民の子どもたちはこういう事を目の当たりにしながら育つわけで、本来当たり前のことなのだから見せることにしました。反応次第では見せるのを止めるつもりで。。。
結果、娘は平気で見ていましたし、「ビーバー!ビーバー!」と連呼していました。
解体されていく様を見て『痛そう』だとか『残酷』だとか『気持ち悪い』とか思うのは大人だけなんでしょう。スーパーでパックに入って売られている肉は平気なのに解体の様子は気持ち悪いなどと言うほうが『不自然』です。物心付く前の子どもにはそういう概念がありませんし、小さいうちからこういう事を見せられる環境に暮らせていることに改めて感謝しています。

2011年6月2日木曜日

一眼レフカメラ用GPSユニット

ようやく新しい機材がペンタックスに決まったところですが、昨日面白い新製品の発表がありました。
【一眼レフカメラ用GPSユニット】なる製品で、撮影画像に位置情報を記録できるアクセサリーです。
ここ最近、このGPS機能を搭載したコンパクト・デジカメが各メーカーから発売され、撮影状況の記録用にいずれ一台欲しいかなと思い始めていました。道の無い原野で撮影すると、あとから地図を見ても撮影場所を特定するのは非常に困難です。デジタルに移行するからにはこういう使える機能はどんどん取り入れていきたいものです。

カタチはちょっといただけませんが(苦笑)、簡易防滴構造なうえに電池込みの重量が約60gらしいので、GPS付コンデジより軽く済むのも魅力的です。価格もコンデジより安いです。緯度・経度・高度・UTC(世界協定時)・方位を記録。さらに簡易天体追尾撮影機能というのが付いているそうです。天体撮影は専門外なのでどういう機能かよくわかりませんが面白そうです。詳しい友人がコメントに解説を書いてくれることでしょう(笑)。

カメラメーカー純正でGPSユニットを出しているのは確か今までのところニコンだけだったと思うので、早速ペンタックスにしたメリットが出てきました。

道具の話ばかりしていても仕方ないので早く撮りに行きたいところですが…その前にさっさと望遠レンズ決断して買わないと。。。

2011年5月30日月曜日

デジタル移行

いよいよと言いますか遂にと言いますか、デジタルへ完全移行する時が来ました。
先日ウェブサイトをリニューアルしましたが、写真の95%はフイルムで撮影したものです。
デジタル全盛のご時勢ですが、私は2009年末までフイルム・メインで撮影していました。
フイルムへの拘りがあったものの、さすがに限界を感じていました。というのもリバーサル・フイルムを現像できるところがどんどん減ってきていたからです。
以前住んでいたカナディアン・ロッキーも、現在住んでいるユーコンも、現地でリバーサルを現像してくれるところはなく、都市部の現像所と郵送でやり取りするしかありません。
ロッキーにいた頃はカルガリーの現像所とやり取りしていましたが、リバーサルの現像を止めてしまうところが相次ぎ、その度に新たな現像所を探さねばならない状況でした。
北米においては日本よりもデジタル化が進んでしまっているかもしれません。日本はまだフイルムの現像にここまで困らない状況ではないでしょうか?日本を離れて久しいので現状がどうなのかよくわかりませんが。。。

カナダに移住し、ある時期からデジタル移行のタイミングを見計らっていましたが、移行するからにはよっぽど納得の出来る理由を必要としていました。
つまり、フイルムでは撮り得ない写真が撮れない限りはまだその時では無いと。
そして遂に決心に至った最大の理由は高感度耐性の向上でした。最近のデジタルの高感度画質は素晴らしく、この点においてはフイルムから大きな飛躍を遂げました。
野生動物の撮影では、日の出前後、日没前後が動物の活動や光の具合において魅力的な時間帯となります。しかしフイルムの時代においてはISO400あたりが画質的に限界で、動物の動きを止めようとすると明るいレンズ(大きく重く高い)を必要としました。
それが現在のデジタルではISO1600程度まで実用域となり、手振れ補正機能の助けもあって少々暗いレンズでもフイルムでは撮れなかったような写真が撮れる可能性を示し始めたのです。

【時】は来ましたが、機種を決断するまでには更に長い時間を必要としました。
メジャーどころのメーカーのフイルム・カメラを使っていたならレンズをそのまま使えるので同メーカーのデジタルへ移行すればよい話なのですが、私が使っていたフイルム・カメラはオリンパスで、このメーカーはフイルム・一眼レフとデジタル・一眼レフの間に長い長いブランクがありレンズの互換性がなかったため(アダプターを介して装着は出来ますが多くの制約があり実用とは言えません)、全く新たに機材を揃えなおす必要に迫られました。
日本に長期一時帰国していた2009年秋/冬、フイルム機材を完全に処分しました。この時に新機材の購入も考えたのですが、当時の経済状況と、全くの新天地であるユーコンへ移住するため生活基盤を築くためには当分撮影出来ないであろう状況から購入を見送りました。
当時は慣れ親しんだオリンパスのデジカメへの移行が有力候補でしたが、一年半の歳月は状況を大きく変えました。各メーカーの動向や方向性を鑑み、ようやく決断に至りました。

私が選んだメーカー/機種はこちら。

PENTAX K-5 with smc PENTAX-DA18-135mm
F3.5-5.6ED AL[IF]DC WR


私の撮影スタイルは原野へ分け入り野営しながらというもの。そのため体積/重量は大きな要素でした。センサーサイズの小さなオリンパスは候補だったのですが、最新のE-5という機種が先代のE-3から小型化されなかったこと、オリンパスよりセンサーサイズが大きいにも関わらず小型軽量だったペンタックスのK-7という機種がモデルチェンジにおいてサイズを保ちながら私が望んでいた高感度耐性を大きく向上したことが決め手となりました。
キヤノンやニコンも当然検討しましたが、同等の機種が大きく重かったことと、『アンチ巨人』な天邪鬼な性格でこういう結論に至りました。

いろいろと相談にのって下さった皆さまありがとうございました。
この決断が吉と出るか凶と出るかわかりませんが、これからも変わらず『らしい』撮影スタイルを貫いていきたいと思います。

ユーコン2年目にしてようやく生活も落ち着いてきました。
いよいよ今夏から少しずつではありますが『撮影活動再開』といきたいと思います。

今後とも宜しくお願いします。
乞うご期待!(と自分に発破をかけてみる)

2011年4月5日火曜日

【極北を愛する人の東日本大震災応援プロジェクト】

先日お伝えした『プロジェクト』が芽を出しました。
尊敬する極北好きの友人の一人、青崎涼子さんが蒔いた種。同じ思いを抱く写真家や冒険家たちが自分たちの種も彼女に託しました。沢山の人の『思い』が栄養となり、種はあっという間に芽を出しました。ここから先はみなさんの『思い』が肥やしです。このプロジェクトが花を咲かせ、実を結ぶと信じています。

以下、プロジェクトの趣旨、概要を転載します。


【極北を愛する人の東日本大震災応援プロジェクト】

全世界の極北ファンの人たちが、「楽しみながら」参加できる、大震災復興ファンドレイジング・プロジェクトを立ち上げました。

趣旨に賛同してくださった極北を愛する写真家、冒険家の方々が、極北の光景写真を、数多く提供してくださっています。写真は、PCの壁紙等として、自由にダウンロードできます。

ダウンロードと引き換えに、ファンドレイジングにご協力ください。

尚、金額の多寡は問いません。既に他機関への募金、ボランティア等、それぞれに活動されている方も多いかと思います。ただ、立場を越えた「極北ファン」の繋がりと温かさと力を、募金という形で表明することで、参加者全員が気持ちを共有できたら嬉しいです。

様々な垣根を越えて、極北を愛する人という立場から、震災支援の輪が広がることを祈ります。




前回の日本帰国時、家族で東北を旅行しました。レンタカーを借り、被災地となった三陸海岸も訪れていました。入り江の小さな町々は巨大な堤防によって備えられていましたが、本当に大きな津波は20mを超えると聞いたことがあったので、実際にそんな津波が来たらこんなに高く見える堤防ですら無意味なんだなと思った覚えがあります。一方で、大地震の可能性が指摘されつつもどこかで『起こらないだろう』という楽観的な考えを持っていたのも事実です。しかし天災はまさに『突然』やってきて、ついさっきまでの日常を一瞬にして奪い去ってしまいました。惨状を知るにつれ胸を痛め、何も出来ない自分に苛立ちを覚えました。一方で不謹慎ながら、幼子を持つ親としては自分たちの旅行中に起こらなくてよかったと思ってしまったのも偽らざる事実です。自分たちのせいではないにしろ、母国が苦難にさらされているのに国を離れて暮らしていることも心苦しく感じられました。
「被災者のために何かしたい」という思いは日に日に大きくなるものの、自分に何が出来るのかわからないままこちらでの日常に流され悶々とした日々を過ごしていました。
今回の企画に参加させて頂けたことは大変ありがたく、一人ひとりの力は小さくとも『共に生きること』で未来を変えていくことが出来るのだと改めて実感させて頂きました。『希望』は人々が苦難を乗り越えるために最も必要な要素であり、『思い』こそが『希望』を叶える原動力なのだと思います。
このプロジェクトを通じ、皆さんの思いを我々の思いと共に未来に届けられれば幸いです。

2011年4月2日土曜日

ウェブサイト・リニューアルのお知らせ



長年更新の滞っていたウェブサイトですが、この度完全に一新致しました。

新しいサイトの準備がほとんど整い、もうすぐ公開出来るぞというところで先の震災があったため、母国が大変なときに私事に注力しているのは如何なものかと公開を躊躇していました。


日本を離れて暮らす者として、仮に自分が日本に居たとしても大して何も出来なかったであろうことを知りつつも、母国が苦難に直面している中で自分は日本に居ないという事実を申し訳なく感じ、自分の無力さにもどかしさを抱いていました。


「こんな自分でも何か出来ることはないのか…」


こちらでの日々の生活に流されながらも、心の中はいつも悶々としていました。
そんなとき、尊敬する友人の一人からある企画を頂きました。そしてその企画は『今僕の出来ること。やるべきこと。』を示してくれました。迷いは吹っ切れました。自分が表現者である以上、表現することを止めてはいけないのだと思います。表現し続けることを通して『何か出来る』のだと思います。


参加プロジェクトに関しては近日中に追ってご報告します。


さて、今回のリニューアルでようやく英語のページを作りました。写真の更新も長らく滞っていましたが、未発表だったものを大量にアップロードしました。
まだまだ未完成なサイトなので、表示やリンクの不具合等ありましたらお知らせ頂けると幸いです。
ご意見、ご感想もお待ちしております。

【熊魂 yukon-bearspirit】